ビザ奴隷、現代の蟹工船・・・?
前回(詳細に関しては上記を参照)に続いてアメリカでの就職やビザ関連のお話。
夢を抱いてアメリカに留学したり、あるいは就職したりする人が避けて通れないのがビザの問題である。
アメリカにおけるビザは非常に細分化されており、特に昨今のトランプ政権においては、アメリカ人の労働を奪いかねない様なビザに関してはますます取得するのが厳しくなっている。
例えば今までだったら、ほぼ無制限に発行されていたアメリカ人の配偶者用のCR-1/IR-1と呼ばれる移民ビザの年間発行数が、それこそ半分以下にされるぐらい厳しさが増している(意図的にビザ審査に余計に時間をかけることによって発行数を下げている)。
アメリカで合法的に働くためのビザは幾つかあるが、大抵の日系企業などはE-1/2(駐在員など主に米国間との貿易を目的としたビザ)か、あるいはL-1a/b(米国内にある本社/支社への社内異動を目的としたビザ)になるのでは無いかと思われる。(他にもインターンなど研修を目的としたJ-1というのもあるが)。
日本の本社/支社などから駐在員としてアメリカに派遣されている場合には、住宅手当やボーナス等も含めて手厚い待遇でアメリカ生活を送れる事が多いが、駐在員から現地採用となったり、あるいは当初から現地採用だった場合は、もしかしたら待ち受けているのは「ビザ奴隷」と呼ばれるイバラの道かも知れない・・・。
基本的にE-1/2、L-1a/bビザはスポンサーとなっている企業に在籍している時だけ有効なビザであり、転職などは認めれていない。(ただしE-1に限って言えば転職先の企業が条件を満たしていればこの限りでは無いが・・・)
アメリカは基本的に実力があればキャリアアップとして転職するのが当たり前の国であり、逆に大幅な昇給は転職なくして望めないという現実があったりもする。
ところが上記であげたビザはその転職が許されていない。
つまり会社としてはビザのスポンサーでいる限り、アメリカに居続けたいと願う社員の生命線を握っている事になる。
これによって会社としては、ビザサポートしている社員に対しては大幅な昇給を与えなくとも、あるいはどんなに労働条件を悪くしようとも、極端な話それこそ使い捨てにしようとも、絶対に逃げられる事はない。
何故なら「会社を辞める = 日本に帰国」だからだ。
ビザのスポンサー企業の中には 奴隷労働に近い様な劣悪な労働条件で社員を抱えている様な所もある。
それこそ日本のIT企業の土建屋的なピラミッド構造の孫受け・ひ孫受け会社の社員に匹敵するぐらいブラックな所も多い。
まさに現代における奴隷労働、蟹工船である・・・。
そうまでしてアメリカに居続けたいのか、あるいはそうまでしてアメリカに来たいのかと言う話になる訳だが、そこまでしてアメリカにしがみ続けていたい人も一定数いる事は確かである。
これがますますそういったSweatshop(労働搾取)的な企業態度を助長させているという悪循環になっている。
他の例としては、ビザをサポートしている会社の中には有給インターンシップ等のJ-1ビザをサポートする代わりに、斡旋業者と組んで「申請者の英語力が弱い」などと難癖をつけて「ビザサポートする代わりに追加の英会話レッスンを受けてください」と称して10万~20万などの追加料金を申請者に求めたりする様な所がある。
それでも最終的にビザのスポンサー企業になってくれたらまだマシな方で、中には「やっぱりだめでした」とレッスン料を搾取するだけと言ったほとんど詐欺まがいの所もある。
最初にこれを耳にした時には「本当に良くこんな事考えるな」と逆に妙に感心してしまった程である。
勿論全部が全部そういった企業ばかりではないのも確かである。
運良くまともな企業にビザのスポンサーになって貰い、さらに運良くグリーンカード(永住権)のスポンサーになって貰える事も当然あるだろう。
ただ永住権を手に入れたら、それで全てが解決かというとそうでもないという現実に気付く事になる。
前回でも取り上げたが、アメリカでの転職において最も強力に物を言うのは「コネ」である。
例えば企業とかにおいて新たなポジションが出来たりすると、社内に「今度こういったポジションに空きが出来るんだけど、誰か家族/知り合いに候補者いないかな?」とメールが流れる。
コネがあれば、そういった情報に関していち早く知らせて貰えたりする訳である。
勿論、正攻法でも転職出来る確率はゼロでは無い。
ゼロではないのだが、それこそ転職希望者の初期のふるい分けをしているのが人間ではく機械だったりする事もあって、そういったものを突破するための細かいテクニックとかも求められたりする。
毎日の様に新たな企業を見つけてはひたすらレジュメを送り続けるぐらいの気概が無いと正攻法では厳しいかも知れない。
そうまでして転職に成功したしても、ある日突然ポジションが無くなって人員整理の対象になってしまう事もアメリカ企業なら当然ながらあり得る話である。
そうならないためにも日頃から上司の機嫌を取っておいて、いざという時には守って貰おうとするのは何処の国においても同じなのかも知れない・・・(ひたすら泥臭く現場の叩き上げのITスキルだけでやって来た自分には無理な話なのだが・・・)。
#ビザ奴隷 #アメリカ転職